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今日卒業式を迎えた上野塾本校の4期生のTが昨夜教室に訪ねてきた。
先日私が不在の時に家内がTと話していたので事の内容は理解していた。
立派な青年に成長し、礼儀正しく教室に入ってきた。
私は「よく来てくれた」と言葉を告げて椅子をTに差し出した。

彼の近況をまず聞くことにした。彼は私の顔を直視してこう話し出した。
「高校3年間は自転車で通い、レスリングを3年続けました。
 僕の学校はインターハイに出場して、全国で5位の成績を残しました。
 練習は厳しかったです。でも辞めませんでした。
 それは僕が中学3年の時に勉強が嫌になり、
 楽な道を選ぼうとして塾を辞めようとしました。
 その時塾長は僕の家に来て僕とお母さんにこんなことを言われました。

 「簡単に夢を諦めたらいけない。こんな大事な1月に塾を辞めたらいかん!
  お父さん、お母さんにこれ以上迷惑をかけられないので
  授業料は要らないから最後まで来い。
  お母さん、来させてやってください」って。

 その時のことが僕の頭の中にずっと残っていました。
 最後まで塾に通って自分の第1志望の高校に進むことができ、
 レスリングと出会うことができました。
 関東の大学、中部の大学からオファーも頂きました。
 でも僕には自動車整備士になりたいと言う夢があります。
 今年民間の自動車会社に就職できました。
 その会社の社長さんが専門学校に通って、
 2級整備士の資格を取るように勧めていただきました。
 昼間は学校に通って夕方から会社に戻って仕事をすることになります。
 2年学校に通ってきっちり資格を取って頼られる整備士になります。
 高3の部活が終了してからバイトを始めました。
 そこで貰った給料を今日持って来ました。
 中3の時はありがとうございました。
 その時の授業料です。受け取ってください」と。

私は目から一筋の涙が流れた。
よくぞここまで成長したと・・・。
私はこう話した。

「お前の気持ち確かに受け取った。ありがとう。
 では授業料をいただくよ」と。

彼がポケットから封筒を出そうとした時私は

「待て、もう俺は授業料もらったよ。
 お前の手にあるその封筒は俺からの就職祝いだ。
 受け取っておけ」って。

Tはきょとんとしていた。
すると「ありがというございます」と私に頭を下げた。
私は「こちらこそありがとう。いい男に成長したな。立派だ」

・・・・

学ラン姿も明日が最後だな。卒業おめでとう!
私の自慢の教え子だ!元気でやれよ!

そんなことを思いながら見送っている自分が居た。

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